私の作品は、主に古い着物地を使います。古布にこだわっている訳ではありませんが、古い建物や田舎の風景を縫うのなら、古い布があう!と思う単純な理由です。
古布と言っても、骨董価値のあるものではありません。どこの家にもある、おばぁちゃんが着ていた時代の物です。
見た建物や自然の質感にあう素材であれば、現在の新しい布でも良いのです。例えば、綺麗な澄んだ青空を表現したい時、発色の良いポリエステル素材の着物地を使う時だってあります。
古布にこだわりすぎると、縫いたいものが縫えなくなります。古布はどんどん無くなっていき、高価になり手に入り難くなります。
骨董価値のある高価な着物地を使っても、小さく切ってしまうのですから、もったいないだけですし、材料費の事を考えたら大変になりますし、縫うのが楽しくなくなりますよね。
私の作品は、1作の中に絹、麻、綿、ポリエステル等、色んな素材を使いこなして、質感と色彩をトータルに違和感なくまとまるように仕上げていくのが特徴です。
絹であっても、染、織など数多く種類があるので、色々な風合いを見つけて縫い合わしていくと、作品に奥行きが出てきます。どこにどんな素材が合うか見つけるのも楽しいです。
今は亡き祖父母や母の古着物が、作品の材料としてぴったり当てはまったりすると、思い出が作品の中で蘇り嬉しいです。パッチワークは布ありきの作品ですから、布がなければ、作品は縫えません。普段から絵の具を揃えるように、布集めをしています。
特徴ある布の紹介をします。
1..風景には欠かす事の出来ない緑の布これらは絹です。
2..田舎の風景に使うかやぶき屋根の布
この着物地が無かったら、かやぶき屋根の表現は難しいです。なんという種類の着物地か分からないのですが、縮みのような風合いでカサカサして、かやぶきの感じにぴったりです。3..私の作品で、一番特徴のある細い格子を縫う綿の絣の着物地
これらの綿の着物地は、今は殆ど手に入らなくなりました。自分の作品用と、私の教室の生徒さん用は確保していますから、今のところ安心です。他にも瓦用、板壁用、白壁用、山、木々、石、空、等々、数え切れない程の材料を持っています。
京都という土地柄か、私の環境が恵まれているのか、材料集めに困る事はなく、自然と集まってきます。どの着物も、私の作品の材料となる為に、先代の持ち主の元で何十年もスタンバイしてくれてたような気がします。
これらの布が、捨てられる事なく私の元へ来てくれた事に感謝です。
捨てられるはずの古着物が、私の作品の中で新たに居場所を見つけて輝いているのを、是非機会あれば見て頂きたいです。