作品の最後の縫い合わせは、空。
タペストリーになると空の面積が大きくなり、その色やデザインは、作品全体のイメージに大きく影響するので、慎重に考えます。
私の作品は、布ありきを前提としています。過去の作品では、染色家の友人に白生地を渡して、空の色に染めて頂いた事もありましたが、今回の作品は全て集めた(集まって来てくれた)着物地を使用しました。
空の布は、なかなか良いのが無くて、選んだのがこの布。
この水色の縮緬の生地は、「清水寺」にも使った大切な布です。今回でとうとう最後になりました。
残っていたのは、布幅が15センチほどしかない細長いものでした。長さもそんなにたくさんなくて、なんとかいけそう、、、というくらいしか残っていません。どうしたものかと思いましたが、左右の縫い代分2センチを残し、13センチ幅で空のデザインを考えました。
空の縫い合わせで大事なことは、いかにも〈足らないから継ぎました!〉という単純な縫製ラインにならないように、縫い合わせが風景として風の流れや季節に応じた雲に見えるように考えます。そして、下に繋がる風景のじゃまにならないような、デザインをする事です。
時々私の作品をご覧になった方が、キルト作品を絵画としてご覧くださり、「なぜ空に縫い目を入れるのですか?一枚の布にすればよいのでは?」と質問されますが、
「着物幅は37センチ前後と決まっていますし、古い着物や端切れを使って大切に縫いつなげることにこだわる、私の手法です。」と答えます。新しい広幅の布を買って、つなぎ目なく縫う事は大変簡単な事ですが、私はそれをやりたくはないのです。今回、大切に残してきた布を沢山使い切りました。いろんな思い出を縫い込めた素敵な作品がまた一つ増えました。
裏の疎水の桜が満開になる頃、トップ完成です。
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