制作手順

2013-12-12


よく人から聞かれる制作手順を記しておきます。
【第一段階】
布の準備
1:購入する場所は、主に東寺の骨董市(毎月21日)です。早起きして朝7時過ぎには到着しています。
創作を始めた頃は毎月行きましたが、最近は1年に1〜2度位。
友人、知人から着物を頂く事も多くあり、自然と布が集まります。
現在は、有難い事に布に不自由がありません。
2:ほどく
お天気の良い日に一度干して、風を通してからほどきます。
着物の裏地は使用しないので、全て処分します。
3:洗う
おしゃれ着洗いの洗剤(アクロンなど)で手洗いします。
しっかりしている着物の場合は、ネットに入れて洗濯機で洗う場合もあります。
縮む事は、気にしなくて良いです(縮ませてしまってOKです)
4:干して、生乾きでアイロンかけ、使いやすいサイズに切る。
5:色別、部分別に仕分けして各引き出しに保存
引き出しには、鳩居堂のお香を入れ、防虫と香りづけにしています。
ここまでは、制作前の普段から準備です。絵の具箱に絵の具を揃えるように、足らない色を買い足しておく様な感じです。布の整理は大切な仕事。どこにどの布があるか分かるようにしておくこと。
乱雑な作業部屋でいい作品を作ることは出来ません。
私の創作は「布ありき」です。縫い始めてから布を買い集めているのでは遅いのです。
持っている布からインスピレーションを受け、デザインする。
絵具で色を塗るのではなく、持っている布で創っていくので、「こんな色にしたい、秋の紅葉の景色を縫いたい」と思っても、そのイメージに合う布が揃っていないとどうしようもないのです。
先の作品創りを目指して、いろんな布を少しずつ集めていくことが大切です。
【第二段階】
資料集め・取材
感性や想像力を磨く
普段から、気になる景色や建物を写真に撮ったり、絵葉書や雑誌新聞の挿絵などをスクラップする。
絵画の展覧会に行ったり、美しい景色を見る。
あの景色なら、どの布がいいだろう?
あの景色の色は何色だろう?
あの建物を縫うなら、どう縫えるだろう?
普段の生活で、形・色彩など全てを意識して見るように心がける。
よく「感性を磨くなんて、もう歳だから無理〜」という言葉を聞きますが、感性や想像力を無くすことは、人への思いやりを無くすことにつながると私は思います。
【第三段階】
構想をねる・デザインと製図
1:資料や写真をみて、イメージを膨らませデザインする。
最初のデザイン画はB4程度の大きさ。
デザイン画を見て、デザインした物がどの位のサイズなら縫えるかをある程度計算し、実物大の下書きを書く。
2:下書きのバランス、パターン構成などを確認した後、実物大の製図を書く。
製図は縫い合わせを考えて線を引く。
製図の段階で、縫う順番が頭に入っている。
どんな色彩にするか、どの布を使うか、この段階で頭に思いながら作業する。
その為には、第一段階の布の準備と整理は必須条件。
布の整理が出来ていないと、使いたい時にその布がどこにあるかと探すことになり、相当な時間のロスになります。
【第四段階】
縫い
1:トレーシングペーパーを使い、製図を厚紙に写し、ジグソーパズルのような型紙を作る。
2:使用布を決める
イメージを色彩化する。
3:縫い始める
型紙に番号をつけ一枚ずつ切り離しながら、布に印を付ける。
参考写真と製図をいつも見ながら、色彩と縫う順番、寸法チェックをする。
【第五段階】
しつけ
1:表面の絵が縫い上がったら、綿(わた)と裏布を重ねしつけをする
【第六段階】
キルティング
ほぼ全ての縫い目に、落としキルトをする
【第七段階】
仕上げ
1:林サヨコ作品の特徴でもある最後の行程。
キルティングした上に細かなパーツをアップリケしたり、刺繍を施す。
2:額縁布を縫い、パイピングして完成。
制作期間は、額作品で数週間、タペストリーは数か月〜1年以上かかる場合もありますが、布集めや構想期間を入れたら、もっとかかっていることになります。