裁縫箱の思い出

2015-03-05

中学生になり授業に家庭科の科目が入り、とても嬉しかった。
授業に持っていく裁縫箱はプラスチックと違うのが欲しいと母に言った。母も若い頃から縫物が好きで、洋裁を習わせて欲しいと親に頼んだけれど、その機会を与えてはもらえなかったそうだ。

「将来、自分に女の子が産まれたら、縫物が好きな子やったらいいな。そうやったら好きなだけ習わせてやりたいと思ってたんやで・・・」と、よく私に話してくれた。
「佐世子は針を持って生まれてきたような子供やった。お母ちゃんの想いが通じたんやな。」と母が言うくらい、私は幼い頃から縫物が好きだった。

私が中学生になり、家庭科が始まるのを喜んでいるのを見て、母は私の希望通りの裁縫箱を買ってくれた。
その裁縫箱は、たしか、祇園にあった和雑貨のお店で買ってもらったと記憶している。
当時は、四条方面に買い物に出るなどめったになかったのに、わざわざ祇園まで買いに連れてくれた母の気持ちを思うと有難い。
赤い絞りの布が貼られた、可愛らしい和の裁縫箱だった。中に同じ絞りの布が貼られた糸巻が入っていたのを覚えている。

私はずっと裁縫箱がいつもそばにある人生を歩いてきた。

c0352397_09215702.jpg写真は現在使っている裁縫箱
創作活動10年の記念に、今後一生使っていけるように、皮革作家さんに別注制作して頂いたオリジナル。
工房以外で制作することがあっても、制作に必要な道具一式を入れて持ち運べるように、細かな寸法を指定して製作して頂いた。
色は大好きなワインレッドを選んだ。

c0352397_09222312.jpg欅の針山ケースは、友達の木彫り作家竹内勢津子さんに彫ってもらった大切な一品。
針山の刺し子布は、母が生前縫っていたものをケースに合わせて針山に仕上げた。