縫いの神様から頂いた宝物。デザイン縫製考案の不思議な話。

2020-06-16

京都のキルト作家、手芸家 サヨコ のブログにお越しいただきありがとうございます。

 

背割堤桜並木の秋バージョンのパーツ作りをしています。

 

 

この桜並木のトンネルデザインは、2012年の個展作品として、初めて春作品を縫いました。
これが原案となります。
「桜道~希望~」

アップリケと刺繍を組み合わせて表現した、桜のトンネルのデザインは、今見ても「どうやって考えついたのかな?」と思います。

町家キルトのように型紙にナンバリングが必要な緻密な製図が無いために、順序だてて縫っていくことが出来ないので、デザイン画を見ながら感覚でパーツを組み立てていくという技法です。

 

町家キルトは縫い合わせを主とした技法ですが、こちらはアップリケが主です。
その縫い順がとても複雑でややこしく、完成作品を作者である私が見ても分からない程です。

 

町家キルトのタペストリーも完成後には「どうして縫ったのかな?」と思うのですが、この木の表現は町家キルトとはまた違うレベルの複雑さがあります。

 

この「桜道~希望~」を縫っていた時期は、病床の母が余命数ヶ月と医師から宣告された時と重なり、私は精神的にも肉体的にもギリギリだったはずなのです。

母の病室で、ずっと付き添い看病をしていて、教室も休まずしていて

 

「いつ縫う時間があったのか?」

「デザインや縫い順を、じっくり考える、気持ちの余裕などなかったはずなのに。。。」

と思います。

 

これまでの人生で、一番辛く大変だった時期に、このデザインと縫製技法を考案し、完成できたことが未だに不思議です。

縫いの神様から頂いたプレゼントのように思います。

 

 

 

その後、2018年に制作した夏作品「緑道~輝き~」
春作品を見ながら、『春作品を参考にして真似させてもらった…』という感じです。

春の桜作品より、枝葉が多くて細かく表現出来ていますね。
秋はこれら2作の経験を踏まえてさらにバージョンアップできるかな?

 

 

私は創作活動開始以来、自分の作品第1号を参考にして2作め、そして3作目という具合に技法を積み上げてきました。

 

新作を縫うとき、いつも過去作品を参考にしています。
お手本が自分の過去作品という不思議さ。

 

「どうして作ったん?作り方教えて。」と、過去作品をじっと見つめて問います。
すると、縫い順を思い出し、新たなアイデアが湧いてくるのです。

 

私にはライバルという人がいません。
技法を学んだり、参考にさせてもらえる人もいません。
過去の自分が良き協力者であり、ライバルです。

この話を「私も同じだ!」と、共感して話合える人とは、未だに出逢えていません。

 

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この桜並木の技法は、母との別れの時期に、神様が私に力をくださった特別大切な宝物です。

このデザインは今後更にバージョンアップし続けることでしょう。
今は小さな額装作品ですが、いつか壁一面のタペストリーで表現したいと思っています。