町家キルトのデザインと製図 努力を楽しむ性格と天職

2020-07-11

京都のキルト作家、手芸家 サヨコ のブログにお越しいただきありがとうございます。

 

大雨が続いております。
被害に遭われた地域の皆様、避難生活をされている皆様にお見舞い申し上げます。

これ以上被害が大きくならないことを祈るばかりです。

 

 

さて、今日は町家キルトのデザインと製図の話です。

 

最近の教室では、新しい作品に進まれて、町家キルトのデザインや製図の工程に取り組まれている生徒さんが多いです。

製図を指導するたび、その設計図のような製図を、初心者でも間違いなく書けるように指導することに驚かれて、

 

「先生はどうしてこの製図を考えたのですか?!」と感心してくださいます。

 

自分でも不思議なんですが、22年前に縫った町家キルト第1作目から、なんの苦労もなく製図が書けて、パッチワークの技法で表現出来たのです。

上の写真が町家キルト第1作「町家と蔵」
この話は何度もブログで話していますが、この1作目に町家キルトの基本的な製図や縫製が全て表現出来ているのです。

 

この作品の後、本格的に町家キルトの創作活動を始めました。
自分が初めて作った、「町家と蔵」をお手本にして作品を増やしました。

創作初期のころは、京都市内にある町家の観察に出かけては写真を撮って記録し、穴が開くほどその写真を眺めました。

 

図書館に通って、町家や京都の風景の写真集や、京都の町家を描いておられる画家さんの作品集も拝見しました。

町家を絵にされている作品は、実際の町家を絵にすると、どうなるかという事が勉強になりました。
同じ本を借りたり返したりを繰り返し、図書館へ何度通ったことでしょう。

本屋さんの建築コーナーで、町家の意匠の本を購入して勉強したこともありました。

 

 

町並みの建築設計本や写真集、町家を描いた作品集、日本画、染色、版画などを参考としながら、自分が撮った写真を見て、その町家を絵に直すことを繰り返しました。

四季の表現は、実際の風景をよく見て、四季の移ろいによる色の変化を観察しました。

 

私は、自分の身の回りにある物を参考にして、町家キルトの世界を創ってきました。

 

町家キルトは「縫い合わすことを前提」にしています。

省略する箇所、デフォルメする箇所を考えて、縫い合わせで表現できる絵にするのです。
建物を真正面から見たオリジナルの「平面画法」です。

 

絵にした町家を、次は縫い合わす順番を考えながら製図に直していくのですが、これも何度も何度も書き直して、バランスを見比べました。

数時間かけて書いた製図でも、瓦の枚数や大きさのイメージと違うな。。。と思ったら全て書き直します。
消しゴムがすぐに小さくなり、テーブルの上が消しゴムのカスだらけになりました。

 

そんなことを繰り返していくうちに、基本となる構図が身について、どんな建物や風景でも自然にバランスよく描けるようになっていきました。

 

町家キルトのデザインや製図、縫製技術は、服飾専門学校での経験も大きく影響されています。

タペストリー作品の構図は特に驚かれますが、あれも自然と身についていたバランス感覚だと思います。

もって生まれた手の器用さもあるでしょう。

努力を努力とも思わず、その努力を楽しめた性格も大きかったと思います。

 

ただ言えることは、製図や縫いに、人並外れた相当な時間を積んできたという事です。

 

 

生徒さん達は、基礎・応用・創作と進んでいくうちに

「あれ?私出来てる!製図が自分で書けてる!」と自覚されるようになります。

まったく製図など書いたことのない人に製図を指導することも、教室をやっているうちに身につけた技術です。

 

私の手芸は天職だと思っています。
縫う事だけではなく、指導することも得意なんだという事が、教室を続ける中で分かってきました。

 

天職に感謝して、自分の技を形にしていく事と、人に手芸の楽しさを伝えていくことが私に与えられた仕事だと思っています。