配色の難しさと楽しさ、町家キルトで伝えたいこと

2021-02-08

京都の手芸家 サヨコ のブログにお越しいただきありがとうございます。

 

 

今日は色彩についてのお話。

町家キルト教室のカリキュラムは、1年目の基礎コースの課題4点の材料は、全てキットで用意しています。

基礎コースでは、布選びや配色の事を気にせず、縫う技術を学ぶ事だけに集中していただくためです。

色彩や素材が揃っている上で、縫う事だけに集中して縫い進めていくと、1作目から色彩や布にこだわった、完成度の高い作品が作れます。
手芸をしたことが無い方でも、すぐに鑑賞に堪える作品を作って頂きます。

 

2年目からは、材料は自分で選んでいただきますが、ここからが町家キルトの本番「自分だけの作品を作る」と言う内容になっていくのです。

 

町家キルトの縫製技術だけならは2~3年もあれば、習得できます。
製図も慣れたら要領はつかめます。

 

一番難しいのは色彩です。

 

これは手芸を自宅で楽しんだり、習っておられる方全てに共通する悩みではないでしょうか?
いくらパッチワーク歴10年以上のベテランさんでも、「縫える事」と「色を使いこなす事」は全く別です。

 

町家キルト歴15年以上の研究会の方でも、最後の難題は色彩だとおっしゃいます。

 

持って生まれたセンスや、長い間、色に関わった生活をした場合は、自然と感覚が研ぎ澄まされていくと思うのですが、なかなか一般の方には難しいと思います。

私は、町家キルトを教え始めたとき、センスだけでは人に色彩指導するのは難しいと実感し、色彩検定の勉強をしました。38歳の頃でした。

 

 

 

当時色彩検定講座の先生が、「2級程度ならだれもが持っているから、色彩で勝負するなら1級を取得しなさい!」と言われました。

3級2級の試験は年2回あるのですが、1級の試験は1年に1回しかなく、失敗した場合は、そのものすごい量の知識を、翌年の試験日まで維持して勉強を続けなければなりません。
私にはその緊張と記憶を維持するのは無理だ、試験勉強の時間も無いと思いました。

必死で勉強して春に2級取得、秋に1級を受験し、ストレートで合格して1級色彩コーディネーターの資格を取得しました。

 

1級を合格したからと言って、それまでの作品の色彩とガラッと変わったという事はありませんでしたが、配色するときの理論が頭にしっかりあるのとないのとでは全く違う事が分かりました。

色を選ぶ時の迷いがなくなりました。
生徒さんに配色をアドバイスする時も、理論立てて分かりやすく説明が出来るようになりました。

 

 

 

最近の教室では、自分で布を選ぶ段階の生徒さんが増えてきましたので、皆さん色彩の壁にぶち当たっておられます。

色彩を別に学んでいただき【色の三属性を理解できる3級程度】の知識があると良いのですが、町家キルト教室は趣味の教室ですし、「素敵な作品が縫えたらよい♪」というレベルでは、色彩の勉強を別にするのは、なかなか大変だと思うのです。

町家キルト教室の生徒さんは60代以降の方が多いので、その年代から色彩を習得するのは大変難しいです。

また、町家キルトは色彩だけではなく、素材も分けることが必要なので、一般の手芸とはまた違ったところがあります。

ですので、私が生徒さんからイメージを聞き、好きな色を聞き、生徒さんのイメージする配色や素材をアドバイスして、布を選んで頂いております。

 

教室に入会されて2年ほどたった頃、自分で布を選び、自分で製図する段階に入った頃から、町家キルトの本当の面白さと奥深さ、そして難しさが分かってこられます。
そのころから、私が町家キルトに込めた想いも理解して頂き、生徒さんご自身も、町家キルトの本当の魅力にはまってくださるように思います。

 

各段階に合わせた様々なアドバイスをして、ご自分の手で作品を縫い上げるお手伝いをするのが、町家キルト教室での私の役目です。

 

 

先日ある生徒さんから素敵なメールを頂きました。

 

その生徒さんは、瓦屋根の配色をされ、教室ではどの色にしようかといろいろ悩んでおられましたが、ご自分が好きだとおっしゃる色を中心として、配色のアドバイスをさせて頂きました。

林サヨコ作品の瓦にはない配色の瓦屋根になったので、「大丈夫かな?」と思われたようですが、暫く縫い進めていくうちに、その配色が亡くなられたお母様のお気に入りのスカーフの配色そのものだという事に気づかれ、私に報告のメールをくださいました。

 

選んだ布の色が、遺影のお母様の着けておられるスカーフの色と同じ♪
なんて不思議で素敵な出来事なんでしょう!!

 

想いを作品に込める、自分の好きな色は自分の心を癒す。
誰かを想って縫う。

私が町家キルトで伝えたいことを体感してくださり嬉しかったです。

 

「町家キルト教室の生徒さん達へ」
配色が分からないと悩む必要はありません。
誰かと競って、奇をてらう作品を作ろうとすると、想いがこもりません。

イメージを楽しく私に伝えてください。
私と色彩を一緒に考えていきましょう。
縫う技術は完璧に習得されているのですから、自信を持って縫い進めてください!

完成した作品は、きっと貴方の自信へと繋がり、一生の思い出となります。
想いを込めた素敵な作品は、きっとご家族もご親戚もお友達も喜んでくださいます。

 

数か月かかる作品を楽しく、大切に縫っていきましょう!